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2020年7月に発売された『ホリスティック・タロット』についてのレビューを書いてみました。
- ホリスティック・タロット について
- ホリスティック・タロット 第1巻(第1章〜14章) の内容
- ホリスティック・タロット 第2巻(第15章〜32章+付録) の内容
- 第15章 スプレッドを熟考する
- 第16章 タロット・スプレッドを考案する
- 第17章 タロット・リーディング:ステップ・バイ・ステップの分析プロセス
- 第18章 状況を作り出す5つの要素
- 第19章 リーディングがネガティブな場合、シーカーの心を落ち着かせる
- 第20章 自分自身のためのタロット・リーディング
- 第21章 タロット・リーディングの場の設定とエネルギーを補うもの
- 第22章 中級者のための熟考と演習
- 第23章 タロット実践にとっての瞑想の価値
- 第24章 不適切な質問
- 第25章 倫理的配慮
- 第26章 タロットと恋愛
- 第27章 タロットと職業
- 第28章 立ち直るためにタロットを使う
- 第29章 深層診断
- 第30章 オープニング・オブ・ザ・キー
- 第31章 マルセイユタロットとトート・タロット
- 第32章 職業としてのタロット実践
- 第33章 わたしについて:タロットとの出会い
- 付録
- ホリスティック・タロット の個人的な感想
ホリスティック・タロット について
ホリスティック・タロット 個人的成長のための統合的アプローチ
発売日:2020年7月
著者:ベネベル・ウェン
訳者:伊泉 龍一/水柿 由香(共訳)
出版:株式会社フォーテュナ
本国アメリカでは2015年に発売されるやいなや即座にタロット・ファンの間で高評価を受けた書籍です。
日本でも出版が決まってから、発売を待ちわびた人も多かったのではないでしょうか。
僕自身も、2014年に発売されたレイチェルポラックの『タロットの書 叡智の78の段階』以来ぶりに、『早く読みたいっ!』となった書籍でした。
ちなみに著者のベネベル・ウェンは、アメリカのタロット占い師です。
タロット・サーティフィケーション・ボード・オブ・アメリカ認定タロット・マスター。
またカリフォルニア州およびニューヨーク州の弁護士として、ベンチャーキャピタルの法律顧問も務めている。
タロットに加え、風水相談、易経の実践を行っている。
↑本書の著者紹介より一部を抜粋。
ちなみに、この書籍は2巻セットとなっています。
個人的には2冊に分けている意味は感じないのですが、なんとなく基本編と実践(応用)編で区切りを付けたかったのかなと言う印象です。
あと、この書籍の最大の特徴としては、タイトル通り『ホリスティック(全体的・包括的)』な内容になっていると言うことでしょう。
その為、タロット占いをする上での『不適切な質問』や『倫理的配慮』と言った内容のページもあるし、『職業としてのタロット実践』として占い師のビジネスモデルやマーケティング、納税申告ガイドラインなどが説明されているページなんかもあります。(ボリュームとしては少ないですが)
また、本書のメインの内容となるカードやスプレッドの説明にしても、一般的な『アーサー・エドワード・ウエイト』や『黄金の夜明け団』の体系に基づいたものだけになっておらず、別の視点や方向から導き出した解釈が入っている部分もあります。
詳しい内容は後述しますが、とにかく色々な視点から『タロット』にアプローチしているのが特徴で、他のタロット書籍では読めない内容がギッシリ詰まっています。
ホリスティック・タロット 第1巻(第1章〜14章) の内容
第1章 タロット解析 – ホリスティックなアプローチへ –
本書(著者)のタロットに対する考え方や取り組み方などが書かれています。
また、本書のあちこちで使用されている『プラクティショナー』『シーカー』と言った、タロットを読む人、助言を求める人の呼び名の説明等がされているので、初っ端からきちんと読む必要があります。
ちなみに、最初のページでさっそく興味がそそられる一文があります。
以下、引用です。
わたしは占いを肯定していない。また、未来の予言ができるということも信じていない。わたしのタロットに対するアプローチは、予言ではなく分析することにある。
この部分を読むだけで、これまでのタロット書籍とは一味違うように感じませんか?
第2章 歴史を学ぶ
タイトルそのままにタロットの歴史が記載されています。
第3章 恐れを静め、理論を考察する – 恐れから理解へ –
この章では、占いを客観的に捉え、一見怖く見えるタロットの絵柄の捉え方と、下記の項目の説明がされています。
・共時性(シンクロニシティ)
・アポフェニアとバターニシティ
・フォアラー(またはバーナム効果)
・神秘的オカルト的な力に基づく理論
・占いの予言成就と言う神話
・気の理論
・投影による心理学的テスト
タロットに限らず、占いをする上で、どれも気になる項目だと思いませんか?
第4章 デッキを選択する
タイトルそのまま、タロットのデッキの選び方の説明です。
第5章 ライダー=ウエイト=スミス・タロットの分析
タイトルだけ見ると、ウエイト版タロットを掘り下げてい解説しているように見えるかもしれませんが、単純に78枚のカードの構成などが表になっているだけです。(大アルカナが何枚とか。)
ただ、後半の四元素を陰陽に分けた上で、大アルカナ22枚と小アルカナのスートの対応をまとめた表などは、一見の価値があります。
第6章 パーソナル・ジャーナル
リーディングを上達させるためのアドバイスが書かれています。
めっちゃ簡単に言うと、記録(ジャーナル)をつけようね。って感じの事が書いてます。
第7章 初心者の反復練習
タイトルそのままです。ボリュームとしては3Pほどです。
第8章 キーワード
大アルカナ、小アルカナのキーワード(2〜4個)が一覧になっています。
第9章 カードの意味の為の辞典
大アルカナと小アルカナのそれぞれのカードの解説です。
大アルカナは、対応する四元素や惑星が載っており、小アルカナは数字の意味なども簡単ですが載っています。同じ数字のカードが3枚出た時、4枚出た時の捉え方なんかも載ってます。
どういう風にリーディングすれば良いかの説明もあるので、ご自身でカードの理解が乏しいと感じているなら勉強になると思います。
ちなみにキーワードの掲載数は第8章に出てきたものにプラスアルファ程度です。
第10章 シグニファイアー・カード
質問者を象徴するカードの選び方が載っています。
個人的に日本のタロット占いで象徴カードを使う方法はあまり一般的では無いように思いますが、知っておいて損はしないと思います。
※知らなくてもタロット占いはできます。
第11章 ファースト・オペレーション
ポール・フォスター・ケースが広めた『ケース・メソッド』を現代に合った形へ修正した方法の紹介です。
ちなみにポール・フォスター・ケースはアメリカのオカルティストで超有名です。
タロットにも深い関わりのある人物なので興味のある方は、ぜひググってください。
第12章 コード・カードを解釈する
タイトルそのままにコート・カードの解説です。
結構なボリュームがあります。コートカードが苦手な方に読む事をオススメしたいです。
第13章 シャッフルし、カットし、カードを引く
タイトルそのままで、シャッフル、カット、カードを引くやり方が載ってます。
ライフパスナンバー(誕生日)を使った少し変わった方法も載っていて面白いです。
第14章 スプレッドをリーディングするための基本
様々なスプレッドの紹介と説明です。
ケルト十字や生命の木、ゾディアック・スプレッド、グラン・タブロー、など項目数で言うとだいたい40項目くらいあります。
とにかくボリュームが凄い・・・。
タイトルに『基本』とついているにもかかわらず、基本の域を超えた内容になっているような気がします。
初心者の方は、見るだけで読む気を無くすかもしれません。
個人的に易経を取り入れた『バ・グア・スプレッド』に興味を惹かれました!
タロットと、易や九星気学を併用している方には賛否両論ありそうな感じで、時間のある時にじっくり考察してみたいです。
第1巻は以上です。
最後に原注がありますが、それを省いても441ページあります。
ホリスティック・タロット 第2巻(第15章〜32章+付録) の内容
第15章 スプレッドを熟考する
以下の項目が説明されています。
・スプレッドの選択
・大アルカナの意味
・コート・カードの意
・カードの逆位置
・数の意味
・スートの意味
・エレメンタル・ディグニティ
・小アルカナのエレメンタル・アフィニティ/方向性/空の色
・直感的なリーディング
・タロットに助言を求めるのは、どのくらいの頻度が好ましいか?
それぞれの項目が簡潔にまとめられています。
ただ、個人的には予備知識が無いと難しいと感じるのではと思います。
初心者の方は、なんとなくの雰囲気を掴むだけで精一杯になるんじゃないかと思います。
※この内容が理解できるなら初心者の域を余裕で超えてます。
第16章 タロット・スプレッドを考案する
独自のスプレッドを作る際の手順や注意点が書かれています。
第17章 タロット・リーディング:ステップ・バイ・ステップの分析プロセス
リーディングの手順(流れ)を8つのステップに分けて紹介しています。
第18章 状況を作り出す5つの要素
以下の項目をそれぞれ数枚のカードを例にとって説明されています。
個人的にはタロットだけでなく、占い全般を通して考えるべき内容だと思います。
・不可抗力
・カルマ
・気質
・生まれた後で学ぶこと
・行動
第19章 リーディングがネガティブな場合、シーカーの心を落ち着かせる
死神や悪魔、塔、ソードの一部のカードなど、一般的に『恐い』印象を受けるカードが出た場合の向き合い方が書かれています。
第20章 自分自身のためのタロット・リーディング
タイトルそのままの内容ですが、冒頭で『自分のためにタロット・リーディングができるかは意見が別れるところだ』と書かれており、客観的な視点を持ちつつ、著者の見解を述べています。
こういう、一般的な意見や考えを客観的に捉えた上で、著者の見解を述べるスタイルが本書の特徴だと言えます。
第21章 タロット・リーディングの場の設定とエネルギーを補うもの
タイトルそのままで、いわゆるパワーストーンやエッセンシャルオイル、色彩、祈りの言葉などで、場を整えることについての著者の見解が書かれています。
第22章 中級者のための熟考と演習
タイトルそのままの内容ですが、かなりサラッと書かれています。
第23章 タロット実践にとっての瞑想の価値
こちらもタイトルそのままの内容でサラッと書かれています。
第24章 不適切な質問
タイトルそのままの内容です。
この辺の内容はご自身の占い師としての在り方によって、是非は変わると思います。
簡易なものですが、著者にとっての『質問の適切さを判断するフローチャート』なんかも載ってます。
第25章 倫理的配慮
こちらもタイトルそのままの内容です。
第24章の不適切な質問と同じく、ご自身の占い師としての在り方によって、是非は変わると思います。
第26章 タロットと恋愛
恋愛の質問に答えていく場合の基本的な考え方です。
簡単ではありますが、78枚のカード全てを説明してくれています。
第27章 タロットと職業
仕事や職業の質問に答えていく場合の基本的な考え方です。
恋愛と同じく簡単ではありますが、78枚のカード全てを説明してくれています。
第28章 立ち直るためにタロットを使う
タイトルそのままに、危機的な状況の人が助言を求めている場合の話しが著者の見解が書かれています。
この辺の内容もご自身の占い師としての在り方によって、是非は変わると思います。
最後に78枚のカードをそれぞれポジティブに捉えた場合の解釈が表になっています。
第29章 深層診断
こちらもタイトル通り、タロットを使った深層診断のやり方が載っています。
第30章 オープニング・オブ・ザ・キー
黄金の夜明け団の『オープニング・オブ・ザ・キー』の基本となる部分の解説です。
ただし、占星術や生命の木(セフィロト)の知識が無いと理解できないと思います。
第31章 マルセイユタロットとトート・タロット
マルセイユタロットとトート・タロットの簡単な紹介です。
第32章 職業としてのタロット実践
タロット占いを職業(仕事)にする場合のお話しです。
著者はアメリカ在住のため、日本とは事情が違うので参考程度に捉えて良いかと思います。
ビジネスモデルやマーケティングの話しも簡単にですが、出てきます。
第33章 わたしについて:タロットとの出会い
タイトルそのままです。著者のベネベル・ウェンさんに興味があるなら、ぜひ読んでください!
付録
付録としてA〜Iまでの簡易リファレンスがあります。
内容は以下の通りです。
A:タロット・スプレッドの簡易リファレンス
B:占星術のシンボルと元素の関連
C:大アルカナの熟考
D:小アルカナのプロフィール表と熟考
E:コート・カードの解釈のためのプロフィール一覧
F:数秘術との関係
G:ピュタゴラス派の数秘術
H:記録用のシートと記録の見本
I:マルセイユ・タロットの大アルカナ(カードのイラストのみの紹介で解説等はありません)
個人的に、この簡易リファレンスはかなり重宝しそうです。
以上、ここまでで376ページです。
1巻と同じく、このあとに2巻の原注があります。
ホリスティック・タロット の個人的な感想
これは、入門書でも無く、解説書でも無く、専門書でも無い。ベネベル・ウェンさんの知識と経験と哲学に基づく最高のタロット研究レポートだっ!!
これがホリスティック・タロットを読み終えての率直な感想です。
本書はタロットカードやスプレッドの説明も充実しており、解説書として濃厚な一冊として見る事もできるのですが、個人的には解説書や専門書と言うよりは『研究レポート』に感じるんですよね。
その理由は、本書のタイトル通り『タロット占い』をホリスティック(全体的・包括的)に、現代に生きる一人の占い師として、客観的に捉えている内容になっているからだと思います。
通常のタロット書籍は、ウエイト版のタロットを解説するにあたって、その制作者であるウエイト自身やウエイトが所属していた黄金の夜明け団(あるいはそのメンバー)の解釈を用いることがスタンダードになっており、常にその視点(方向性)に寄り添うような内容になっています。
しかし、著者であるベネベル・ウェンさんは、本書の中で『わたしのタロットへのアプローチは魔術や宗教とは関係がない』と、ある意味、黄金の夜明け団の解釈に染まっていない事を感じさせる一文を書いていたり、『あるひとりの著者のキーワードだけを受け入れるよりも、複数の参考文献をお勧めしたい』と、誰か一人(一方向)の考えや解釈だけを採用することを良しとしてない一文も書いています。
その為、本書を『タロットの解説書』として捉えてしまうと、ある程度のタロットの知識がある人にとっては、『この解釈はおかしい』とか『この思想はタロットに合わない』と言った不満が出たり、内容的に日和見主義に感じてしまう部分も出るんじゃないかと思います。
特に、黄金の夜明け団が定めている四元素をベースにリーディングをしているタロティストにとっては、東洋の五行思想をタロットに当てはめたスプレッドの解説に疑問を感じる事もあるかと思います。
僕自身も本書を読んでいて、「この解釈はどこから来ているんだろう?」とか、「実践(仕事としての鑑定)で採用するには不安だな。」とか「これって実際は意味無いよね」などと感じる部分もありました。
なので、感覚的に『解説書』として感じなかったんですよね。
ただ、ここで勘違いしないで欲しいのですが、あくまで『解説書』に感じなかっただけで、内容の多くは、「おもしろい考え方をしているなぁ」とか「これはちょっと僕も試してみたい」となりましたし、「おぉ、これってそういう意味があるんだ!」と言う新しい発見や学びもありました。
タロットをタロットの世界観だけで『ホリスティック(全体的・包括的)』にアプローチするのではなく、タロットを『占い』と言う大きな枠組みで『ホリスティック』にアプローチしている事も、他のタロット書籍とは違う切り口になっており、非常に参考になりました。
そして全て読み終えた時に、「あぁ、これは著者ベネベル・ウェンさんが今まで勉強してきた事や経験してきた事をまとめたモノなんだな。これは一人のタロティストの研究レポートなんだな。」と感じたんですよね。
僕にとって、この『ホリスティック・タロット』は、疑問と興味と発見と学びが詰まっており、今までに無かった種類のタロット書籍に感じています。
ちなみに、僕自身はタロットの考察が大好きですし、それなりのタロットの知識と経験があるので、上記のような研究レポートに感じただけかもしれません。
あまりタロットの知識が豊富でない初心者にとっては、普通に解説書や専門書に感じるかと思います。(入門書としては難しく感じると思います。)
個人的には、タロットの基礎知識(カードの意味や捉え方)を一通り、把握してから読む方が良いと思うので、タロット初心者に本書はオススメしません。
しかし逆に、初心者を脱したい方や、タロット占いの考察や研究が好きな方には、読む価値が十分にある書籍だと思います。
僕個人的には価格以上の価値を感じられる、貴重な一冊を手に入れる事ができたと思っています。
以上、『ホリスティック・タロット【レビュー・感想】』でした。